日本政府が世界に発信するDFFT のコンセプト「Trusted Web」の具体策を聞く(2)

Trusted Web が目指すべき方向性

 以上を踏まえ、Trusted Webは、「デジタル社会」における様々な社会活動に対応できるTrustの仕組みを作り、多様な主体による新しい価値の創出を実現することを目指していくこととする。

  • Trusted Webが実現を目指すTrustの仕組みは、特定サービスに依存せず、

  • 相手に開示するデータへのアクセスのコントロールを可能とし、

  • データのやり取りにおける合意形成の仕組みを取り入れつつ、

  • 検証(verify)できる領域を拡大し、これまで事実を確認せずに信頼していた領域を縮小することにより、Trust(相手先が期待したとおりに振る舞うと信じる度合い)を高めていくことを目指すものである。

  • この際、既存のインターネットの上に、一定のガバナンスや運用面での仕組みとそれ可能とするTrustに関する機能を、上から重ね合わせるオーバーレイのアプローチで、Trustに関する機能を追加していくこととする。これにより、インターネットを通信基盤から、自律分散協調型の通信・情報基盤へと進化させていく。

  • 具体的には、データの送受における出し手(Sender)と受け手(Receiver)の役割等において、Trusted Webが実現を目指すTrustの仕組みは以下のとおりとなる。

① データの出し手 (Sender)

個人・法人が、データの受け手を確認した上で、合意に基づき、開示するデータをコントロールし、データの活用から生じる価値をマネージできること

② データの受け手 (Receiver)

 データの出し手ややりとりするデータを確認することができ、合意に基づき、価値交換が履行されること

③ データのやり取りのスキーム

 検証可能なデータに基づき、送り手と受け手の間で相互の意思を反映した合意形成やその後の状況に応じた変更が可能であり、その過程や結果を検証することができること 

④ 関係するステークホルダー

 関係するステークホルダーの役割を明確にし、それぞれがその役割に沿って、全体の系としてトラストに関わる機能を維持・管理すること

Trusted Web ホワイトペーパーver1.0 概要②

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ペインポイントを解消する方策

  • インターネットとウェブは、グローバルに共通な通信基盤として拡大し、広く情報へのアクセスを可能としたが、他方で、その上で動くアプリケーションでは、様々な歪みが生まれている。

  • これまでのインターネットやウェブの空間においてはコードや市場によるガバナンスが中心となり、フィジカルで人々が社会活動を行う前提となってきた社会規範によるガバナンスが十分に機能していなかったと考えられる。今後、サイバーとフィジカルが融合していく中では、こうした社会規範によるガバナンスが有効となるよう基礎的な機能やそれを継続的に改善し運用する仕組みを再構築していくことが求められるのではないか。

  • その際には、これまでみてきたペインポイント、その原因となっている歪みを解消すべく、

    • 自らがデータへのアクセスをコントロールできること

    • アクセス数ではなく、信頼できる情報が価値を持ち、ユーザーの選択によりそうした情報に触れることができること

    • より透明な形で合意形成を行い、その過程・履行状況を検証できること

    • 多様な主体がガバナンスに関与すること

      によって、データをやり取りしつつ、それを通じて価値を創出しながら社会活動を行っていくことができるよう、これらを具現化する仕組みを、社会の基盤となるインターネットとウェブに付加していくことが求められているのではないか。

  • その鍵となるものがTrustである。ここでは、Trustを、「事実の確認をしない状態で、相手先が期待したとおりに振る舞うと信じる度合い」と定義する。その場合、Trustは、全てを確認するコストを引き下げ、システム全体のリスクを関係者で分担することに意義がある。利用者はTrust維持コストと問題発生時のリスク(被害の程度×蓋然性)のバランスでTrustするか否かを判断することになる。

    現在のインターネットやウェブにおけるこれまでのTrustの仕組みでは、不知の者同士の信頼を確保するには制約があるなど、確認・検証(verify)できる領域が狭くなっており、事実を確認せずに、仲介するプラットフォーム事業者等を信頼せざるを得なくなっている。

  • しかしながら、プラットフォーム事業者等がその領域内において実現しているTrustは、サイロ化され、ブラックボックスとなっているために外部から検証が困難であり、単一障害点となるリスクも抱えており、デジタル社会のTrustとしては必ずしも十分なものとはいえなくなってきている。こうした中で、プラットフォーム事業者のTrustへの過度な依存が上述の様々な歪みを生み出している。

    これに対し、デジタル技術の進展によって、相手が不知の者であっても過程や結果の確認・検証が可能となってきており、リスクを少なくして取引することができるようになっている。これにより、従来事実を確認せずに信頼せざるを得なかった領域を縮小し、確認・検証できる領域との最適な組合せを再構築することが可能となっている。

    以上を踏まえれば、、データの「出し手」が相手に開示するデータをコントロールすることを可能にし、データのやり取りにおける条件設定に関する合意の仕組みも取り入れつつ、相手から提供されるデータや合意の履行について検証(verify)できる領域を拡大し、これまで事実を確認せずに信頼していた領域を縮小できる新しいTrustの枠組みを構築することにより、相手先が期待したとおりに振る舞うと信じる度合い、すなわち、Trustを高めることを目指すこととしてはどうか。

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