『IT Leaders』の掲載は5月20日でした。マイナンバー交付枚数や特別定額給付金の給付状況は記事を執筆した5月10日現在のものです。
「STAY HOME週間」真っただ中の2020年5月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)特別定額給付金10万円のオンライン申請受付が始まった。マイナンバーカードがあれば、手許のPCやスマートフォンなどで申請できる。役所に行かなくてよいので、「不要不急」の外出を避けることができる。便利な時代になったものだ、と感慨深い向きもあるだろう。しかし、いざ手続きが始まってみると、現場では思わぬ混乱が起こっている。背景にはITシステムを含めた制度設計の欠陥が見えてくる。
オンライン申請自体は10ステップ、5分で完了
マイナンバーカードの手続きはこれから、という人もいるに違いない。そこで確認の意味で書いておくと、オンライン申請の手順は次のとおりだ。
①マイナポータル(https://myna.go.jp/)にアクセスする。
②利用者証明用暗証番号を入力する。
③マイナンバーカードを読み取る。
④「特別定額給付金」を選択する。
⑤当該市区町村を選択する。
⑥メールアドレス、電話番号を入力する。
⑦氏名、住所など必要事項を入力する。
⑧振込先預貯金口座の情報を入力する。
⑨口座を確認できる通帳写真を添付する。
⑩署名用電子証明書暗証番号を付ける。
これらを済ませたら、内容を確認して送信――という手順だ。用語を勘違いしたり、利用者証明用暗証番号/署名用電子証明書暗証番号を間違えたりしなければ、送信まで5分もかからない。
最初に出てくる「マイナポータル」は、マイナンバーが付された全国民に用意された、個人のマイナンバー用ポータルサイト/サービスのこと。マイナポータルを利用するためには、利用者証明用電子証明書を搭載したマイナンバーカードが必要となる。このマイナンバーカードの発行申請にはかなり手間がかかることから、これまで実体である12ケタの「個人番号」が記載された「通知カード」で事足りていた向きも多いと思うが、今回の給付金申請ではマイナンバーカードが必須だ。
念のために書いておくと、ICカードリーダーがなくても、スマートフォンでマイナンバーカードを読み取ることができる。ちなみに利用者証明用暗証番号はいわゆるログインパスワードで、マイナンバーカード交付時に設定した4ケタの数字、署名用電子証明書暗証番号は本人認証パスワードで6~16ケタの英数字だ。
ようやく「その時」が来た、と思いきや
すでにマイナンバーカードを取得していた人は、「持っていてよかった」「やっと役に立つときがきた」と思ったことだろう。これまで仲間内で「自分はマイナンバーカードを持っているよ」と口にするのは、「携帯電話やスマートフォンを持っていない」と言うのと同じように、奇異な目で見られるのがオチで、見事なまでに普及していなかった。
ここで留意しておかなければならないのは、マイナンバーカードを作る(持つ)かどうかはともかく、マイナンバーは国民1人ひとりに付番され、さまざまな行政管理事務に使われている、ということだ。使い勝手がよい・悪いは国民目線の話で、本来行政機関や政策推進機構にとってこんなに便利なものはないはずのものだ。
表向きの理由はさておき、マイナンバー制度は行政機関が住民(国民)1人ひとりを管理するためのもので、サービスを提供するためのものではない。だからこそ、2008〜2009年当時、総務省の一部では、「運転免許証、健康保険証、パスポートなど公的な個人認証番号を選択できるようにする」ことを検討していたわけだった。だからこそ「マイナンバー」だったのだ。そのような経緯はともかく、好むと好まざるとにかかわらず、すでに住民(国民)1人ひとりにマイナンバーが付いている以上、有効に活用しない手はないだろう。
しかし、今回の特別定額給付金はマイナンバー制度と相性が悪かったと言わざるをえない。その理由はマイナンバーカードを持っている人が少ないからではない。預貯金口座とヒモ付いていないから、でもない。
「STAY HOME週間」明けの2020年5月7日、役所の窓口に大行列ができる事態が発生した。高市早苗総務大臣は「給付金の申請はマイナンバーカードのオンラインで」とPRした。これが、かえって逆効果になってしまった。マイナンバーカードの交付申請をする人ばかりでなく、暗証番号を確認したい、暗証番号を変えたいという人が相次いだのだ。
それを機に、全国の市区町村は一斉に「今から交付を申請しても、カードを手にするのは1カ月以上先。新規のカード交付申請が殺到しているので2カ月かかるかもしれない」との注意書きをホームページに載せ始めた。それなら役所から特別定額給付金の申請書類が届くのを待ったほうがいいことになる。
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