テレワークが企業の”標準装備”に
ハッキングや情報漏洩・流出を防止する観点から、多くの企業が業務用ノートPCやタブレットの持ち帰りを制限している。だからといって、私用PCから基幹系システム/データベースにアクセスすることを許すには、システムの大幅な改修が必要になる。先行して成果を上げている企業は別として、日本におけるテレワークの実態は「在宅勤務という名の自宅待機」にならざるをえない。
そうした中、業務の場所に依らない全社的なワークスペース、コミュニケーション/コラボレーション基盤の整備は、IT部門においてまさに急務となり、恒久的にしろ、暫定的にしろ、大半の企業で進めていることだろう。
ここでポイントになるのが、従業員が会社の外に持ち出した業務用PCやモバイルデバイスにも、自社の運用/セキュリティポリシーを適用するモバイルデバイス管理(MDM)の仕組みだ。この仕組みにより、個々の端末にもシステムとデータベースへのアクセス権が適切に設定できるようになり、業務処理の4W1H(だれが・いつ・どこで・何を・どのように)を、部門単位ないし全社で集約・共有が可能になる。
ここまでが整備されて、初めて真のテレワークが実現されることになる。MDMと言えば、本誌読者の場合、マスターデータ管理を先にイメージする向きもあるだろうが、モバイルデバイス管理もまた重要なもう1つのMDMである。もっと言うと、これがもっと発展すれば、個々の技術や能力を適正に生かすPSA(Professional Service Automation)の普及にもつながるだろう。その意味では、不謹慎の誹りがあるかもしれないが、今回の新型コロナウイルス感染拡大は、日本のIT業界にとって、変革の契機ともとらえられる(関連記事:人月モデルから「PSA」へ─日本のITサービス業は危機感を行動に移せるか)。
東京都内の平日、テレワークを実施した大手企業本社の周辺では、客足が減って飲食店が困っているという。ところが首都圏の通勤電車が空いたと考えるのは間違いで、普段の乗車率が200%とすると170%程度、押し合いへし合いなのは変わらないそうだ(筆者は通勤時間帯に電車に乗ることがほとんどなく伝聞だが)。つまり、この時勢でも、東京一極集中の問題は思ったほど解消していない。
思い起こすのは、首都圏直下型地震のリスクを減らす観点から叫ばれた「首都機能移転/分散」だ。「国会等の移転に関する法律」(1992年12月成立)だ。この法律は今も生きているし、新たに「デジタル手続き法」も施行されている。この秋にはAWS(Amazon Web Services)による「政府調達におけるクラウド・バイ・デフォルト」もスタートする。首都機能の移転・分散はこれを機にもう一度検討されていい。