自衛隊小銃乱射事件は第三者機関が調査すべき

「経済記者シニアの会」掲載から3か月超の過去記事ですので「ご参考まで」ですが

http://blog.livedoor.jp/corporate_pr/archives/60599988.html

 掲載した写真は原則フリー素材:Webサイト「防衛省・自衛隊KIDS SITE/自衛隊壁紙・写真館」のトップに載っているものを転用させてもらいました。「KIDS SITE」というだけあって、「自衛隊壁紙:じえいたいかべがみ」「陸上自衛隊:りくじょうじえいたい」というように、子どもでも読めるように漢字にはルビが振られています。

 国民の目に見える範囲で陸上自衛隊の皆さんが活躍するのは、おおむね大規模災害における救援・救助活動でしょう。東日本大震災の直後、現地に入ったときに目撃したのは遺体の捜索と収容、避難者への救援活動、津波被害の瓦礫処理でした。駐車場に並ぶ各地のナンバープレートに、思わず「ご苦労さまです」と声をかけた記憶があります。

 ではあるのですが次世代、次々世代の隊員を確保するには、掲載したような“勇ましい”戦闘シーンにならざるを得ないのか、と考え込んでしまいます。外敵の攻撃に備え、いざとなったら武器をもって跳ね返すのも「国防」ですが、もう一方、災害から国民を守るのも「国防」であれば、せめて写真館の半分は災害出動、救援・救護活動を紹介してほしいものです。

最初の供述と話が変わってきていないか?

 それはそれとして、6月14日の午前9時過ぎ、岐阜市日野南にある陸上自衛隊の日野基本射撃場で発生した自衛官候補生による小銃乱射事件は、世の中に大きな衝撃を与えました。この4月に入隊したばかり、自衛官になるべく基礎訓練中の18歳の自衛官候補生が、52歳と25歳の自衛官を射殺、もう一人の25歳の自衛官に大怪我を負わせた、という事件です。

 さすがにネット時代だな、と思わせるのは、事件の翌日(15日)にはWikipediaに「日野基本射撃場発砲事件」がアップされ、「6人きょうだいで幼少期に施設に預けられ、中学は不登校」(集英社オンライン:6月16日)、「キレやすい問題児だった」(文春オンライン:6月17日)等々、あれやこれや犯行者の素性や氏名、顔写真の“探索”が始まっています。

 また死亡した教官については、「面倒見のいい人だった」「子煩悩で責任感のある人だった」「犯行者とは密接な関係になかった」といった情報が流れています。

 さらに「小銃」といわれるもの(制式名称「89式5.56mm小銃」)はいわゆる「ピストル」(拳銃)ではなくて、最大30発の弾倉を装備し、1分間に最大850発を発射できるということも分かりました。とてつもない殺傷能力を備えた「機関銃」で、旧大日本帝国陸軍の「三八式歩兵銃」(5発装弾)などは比べものになりません。

 事件の詳細については、当局が調査中なのでここでは踏み込みません。ただ報道されている限りでは、

・6月15日:警察の調べに対し、候補生は「52歳の教官が狙いだった」と供述している
・6月16日:教官の“叱責”が引き金…自衛隊の「厳しい指導」は曲がり角に差し掛かった(日刊ゲンダイ
・6月17日:逮捕の自衛官候補生、弾を奪おうと発砲か、死亡・不詳の2隊員に(毎日)

 とあって、逮捕直後の供述「教官への恨み」が「銃弾を奪おうとした」に変わっているように見えてしまいます。毎日の記事は「52歳の教官への恨みを晴らすべく、銃弾をうばうために発砲した」とも読めるので要注意です。

 この記事を受けて2チャンネルでは「サイコパス?」「テロ未遂」「立てこもりか」といった反応が並び、猜疑心が掻き立てられている様子が読み取れます。

身内が身内を調べる閉鎖的なイメージを払拭するために

 殺害された方々をあえて悪し様に評する人はいないのと同じように、犯行者を慈悲善業・良心良識の人と評することもありません。被害者・加害者の立ち位置を割り引くと、どちらにも長所と欠点があったはずです。であればこそ、18歳の自衛官候補生がなぜ、何を目的に小銃乱射、3人の死傷者を出すに至ったかを調べることが重要になってきます。

 自衛隊の中、しかも外界から遮断された射撃訓練場の中で起こった事件です。犯行者の逮捕と初動捜査は岐阜県警が行いましたが、あっと言う間に送検の手続きが行われ、捜査権は自衛隊の警務隊に移りました。専門家によると、機密保護が理由だそうですが、自衛隊ならではのルールや風土があるのでしょう。

 また別の専門家によると、日本には軍法会議、軍法法廷がないので、警務隊と県警が共同で捜査して検察庁に送致することになる、ということです。なるほど現行の法制度ではそうなるのでしょうが、筆者のような「一般人」には、どうしても「自衛隊=閉鎖的な組織」のイメージが拭えません。

 最初の供述は「何となくわかる」(動機が恨み、という一点についてだけ)ものでしたが、自衛隊警務隊が関与すると「?」になってしまいました。18歳の彼は銃弾を奪って何をしたかったのでしょうか。毎日の記事が観測情報でなければ、の話ですが。

 漏れ聞こえてくるところを総合すると、自衛隊の警務隊はメディアに公開可能な情報を提供しているようではあるのですが、なにせ多くのメディアは大本営発表の垂れ流し、調査報道はしない、お上への忖度満載です。基礎的な事実関係の捜査が終わったら、検事経験者や人権保護団体などを入れた第三者機関にバトンタッチするのがいいように思われます。