広がるマンパワー依存型との格差
マンパワー依存型受託サービスと同じように、就業者の目線で検証する。就業者1人当り業績を算出してみよう(非正規雇用者数は2021年3月末現在の数字、正規雇用者数はYahooファイナンス掲載の直近データを使用すること、企業ベースの数値を同じ修業員数で除しているため、営業利益率、純利益率は変動しないのはマンパワー依存型受託サービスと同様)。
◆全体(50社)
- 就業者数 1万3772人 △7.4%
- 正 規 1万1976人 △8.2%
- 非正規 1796人 増減なし
- 売 上 高:2834万円 △ 15.4%
- 営業利益: 517万円 △ 72.8%
- 経常利益: 609万円 △104.9%
- 純 利 益: 399万円 △134.7%
修業員数が7.4%増加したため、単純計算による企業ベースの増加率が23.6%から15.4%に低減した。営業利益、経常利益、純利益も同様に低減しているが、高い伸びであることに変わりはない。
マンパワー依存型受託サービスと比較すると、売上高は167.1%(1.7倍/Webサービスを基準にするとマンパワー依存型受託サービスは59.9%)、営業利益は2.8倍(35.4%)、純利益は314.3%(31.8%)となる。その格差は2021年3月業績からさらに広がった。
主業務別の1人当り業績は以下のようだった。
◆広告代理サービス 7社
- 就業者数 1778人 △3.0%
- 正 規 1505人 △3.6%
- 非正規 273人 増減なし
- 売 上 高:2843万円 ▼19.9%
- 営業利益: 388万円 △ 1.4%
- 経常利益: 390万円 △ 2.1%
- 純 利 益: 123万円 ▼38.9%
ただしレントラックスの補正値による1人当り売上高は3645万円で、前年同期比は△2.7%となる。
◆データ分析・活用 13社
- 就業者数 2255人 △1.0%
- 正 規 2016人 △1.1%
- 非正規 239人 増減なし
- 売 上 高:2960万円 △ 25.1%
- 営業利益: 299万円 △ 80.8%
- 経常利益: 293万円 △ 89.9%
- 純 利 益: 221万円 △102.6%
◆ASP/SaaS 30社
- 就業者数 9739人 △9.4%
- 正 規 8455人 △11.0%
- 非正規 1284人 増減なし
- 売 上 高:2802万円 △ 23.7%
- 営業利益: 590万円 △ 86.9%
- 経常利益: 722万円 △127.0%
- 純 利 益: 491万円 △149.6%
2001の前と後で質的な違いがある
根拠があるわけではなく、ミレニアムの年である2001年を境に、その前と後に設立された企業に違いがあるかを調べてみた。背景にあったのはm同じ「Webサービス」でも設立年次によって相違があるかもしれない、という漠然とした疑問(仮説)である。
設立年次で再集計すると、偶然にも2000年以前が25社、2001年以後が25社と全く同数になった。集計結果は以下のようになっている。
設 立 年 2000年以前 2001年以後
企 業 数 25社 25社
就業員数 9096人 4676人
正 規 7896人 4080人
非正規 1200人 596人
売 上 高 2455億75百万円 1446億56百万円
営業利益 549億52百万円 161億99百万円
営業利益率 22.4% 11.2%
経常利益 681億40百万円 156億77百万円
純 利 益 452億06百万円 97億64百万円
純利益率 18.4% 6.8%
就業者1人当り
売 上 高 2700万円 3094万円
補正値 3399万円
営業利益 604万円 346万円
経常利益 749万円 335万円
純 利 益 497万円 209万円
設立が2000年以前の企業25社の事業規模は、2001年以後の25社に対して就業者数で1.94倍、売上高で1.70倍、営業利益で3.39倍という端的な相違が出た。就業者1人当りに換算すると、売上高は2001年以後設立の企業群が1.15倍(補正値では1.26倍)と高くなっているが、営業利益、純利益とも、2000年以前設立の企業群の方が1.7~2.4倍も多い。
1人当り売上高と営業利益の差分=売上原価に占める就業者の年収(給与・賞与)の割合は、2000年以前の企業群が29.5%であるのに対し、2001年以後の企業群は21.4%と低い。営業利益率の高低は給与水準と直接的な関係がないことになる。2000年以前設立企業群が長く安定的にサービスを提供することによって大口顧客を確保しているからなのか、2001年以後設立企業群の一部に試行錯誤段階の企業が紛れているためなのか、今後の展開と併せて分析する必要がある。