ウェビナーも悪くない 3.08「COG2019」オンライン公開イベントを見た・聞いた体験録 

新型ウイルス感染の拡大防止策として、テレワークとWeb会議システムが注目されている。そのWeb会議システムをセミナーに適用したのがウェビナー(Web+Seminar=Webinar)だ。今回、筆者はZOOMというシステムを使ったウェビナーに参加する機会があった。見た・聞いたの体験録をまとめた。

【CUG2018のレポートは下記】

https://www.itkisyakai.com/entry/2018/06/19/%E3%80%8CCOG2018%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%A6%E3%80%8D%E3%81%AB%E8%A1%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F_%E3%80%8C%E5%AE%98%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E6%B0%91%E3%80%8D%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%AA

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 3月8日の日曜日、午後1時から「チャレンジ! オープンガバナンス(COG)2019」アイデアコンテストの最終選考が開かれた。主催したのは一般社団法人オープンガバナンスネットワーク(東京都港区赤坂、代表理事:奥村裕一・元東京大学特任・客員教授、略称:OGN)。

共催は東京大学公共政策大学院・科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」教育・研究ユニット(STIG)、東京大学ソーシャルICTグローバル・クリエイティブリーダー育成プログラム(GCL)と、何やら厳しい名前が並ぶ。第1回目のCOGが実施されたのは2016年だったので、今回が4回目となる。

 http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/padit/cog2019/

さらに今回から日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)と日本マイクロソフトが協賛に加わった(LINEは第3回目から協賛)。もっと多くの民間企業が協賛に名を連ねるといいのだが、かといって利益誘導型になってもマズイ。難しいところだろう。

COGって何? という人が多いと思うので説明すると……と言いたいところなのだが、実はかく言う筆者も2017年の第2回目に、奥村氏の誘いを受けて取材に出かけたのが最初。行政機関(ここでは主に市区町村)が公開しているデータ(オープンデータ)を活用し、市区町村、市民、学生(教育・学術研究機関)が協働で地域の課題解決に取り組むプロジェクトだ。「ITを利活用したパブリック・コミュニティの形成」という観点で興味があった。

募集・審査のステップは下の図の通りで、3月8日のオンライン公開イベントは「ステップ3(いまここ)」に相当する。また「ステップ2」での応募件数は56件だったという。

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最終審査は12チームを4組に分けて参加者が投票

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奥村裕一氏 ウェビナー画面から(片寄っているのはカメラの位置の関係)

当日のスケジュールはCOG2019のホームページを見ていただくとして、最終審査は1組3チームずつ、赤・青・黄・緑の4組計12チームで行われた。3チームのプレゼンテーションが終わったらウェビナー参加者全員で投票を行って決勝1チームを決める。最後に4チームの順番をつける、という段取りだ。

12チーム(太字)とプロジェクト名は以下のようだった。プレゼンテーションの内容は紙幅の都合で割愛する。COGのホームページ「04 Primay screening result/一次選考結果」からダウンロードできるので、参照されたい。

《紅組》多摩市若者会議(多摩市)「多摩市の街並み共有プロジェクト〜Googleストリートビューを活用した遊歩道・公園の丸見え化〜」/チームKyo-SO京都市)「京都の木とICTの目でつながる心」/チームFOC深谷市)「働きづらさを抱えた人が働ける!分身ロボット窓口案内で日本一あたたかい市役所を実現」

《青組》Code for SUSONO裾野市)「安全に我が家へGO!災害時徒歩帰宅支援マップ作成」/Pharmatching(ファーマッチング)しておくれやす☆京都市)「ICTの活用により薬局・薬剤師等の活用支援ファーマッチング」/チームでっかいかるた越前市)「多文化交流を実現するイベント『でっかいかるたで大合戦!』」

《黄組》大東文化大学社会学部 阿部ゼミ地域公共交通チーム鶴岡市)「デマンド型タクシーと空き店舗を活用した高齢者に優しい公共交通」/ナルオレボリューション(西宮市)「住人十色なNEO自治会〜笠屋町自治会の第一歩」/横浜ホイールマップ横浜市)「バリアフリーではない施設の突破方法調査」

《緑組》わくわく新都心okinawa那覇市)「新都心公園避難村(防災フェス)」/まぎケア運用チーム倉敷市)「こども防災マップクラブ」/草津おみやげラボ情報部草津市 「「まめバスすごろく」で疑似体験!地域の宝を発掘、活用、未来につなぐ」

京都市のファーマッチングが1位に

プレゼンテーションが終わると審査員とのQ&A、講評があり、3チームが終わると投票というリズムだ。参加者の投票で《赤組》から深谷市、《青組》から京都市、《黄組》から横浜市、《緑組》から草津市が勝ち残った。

最終4チームによる決選投票は、4位:草津おみやげラボ情報部(草津市)、3位:チームFCO(深谷市)、2位横浜ホイールマップ(横浜市)、1位:Pharmatching(ファーマッチング)しておくれやす☆(京都市)という結果だった。

チームは異なるが、草津市京都市はここ数年、連続で上位に選ばれている。オープンデータに対する行政と市民の意識が反映しているのかもしれない。各チームのプレゼン内容については審査員が個々に講評しているので、本稿では触れない。

ただ、過去3回に提出された数多くのプランに共通するのは、チーム内での盛り上がりにとどまり、いまひとつ"出口"が見えないことだ。もともと「アイデアコンテスト」なので、それ以上を求めるのは本旨に反するかもしれないが、横展開の方策や事業化への道筋も探ってほしいところだ。

このことについて奥村氏はかねてから、「私たちの狙いはアイデアに終わらせず、つまり絵に描いた餅にせず実践すること、このためフォローアップを大事にしている」と語っている。それを示すように、エンディングのインターバルでは、第1回COG2016で優勝した中野区里親チーム(東京・中野区)の「ナイスな里親12ヶ条」の"その後"が報告された。里親12ヶ条を理解し実践する動きが、着実に全国に広がっているという。

LINEや日本マイクロソフトが協賛しているのは、「ビジネスの種」を見つけたいからに違いない。同様に、全国各地に同様のニーズを持っている事業者がいるはずだ。市区町村のオープンデータを利活用した問題解決に、いかにスマートに(儲けたいのギラギラ感をオブラートに包んで)多くの民間事業者を巻き込むか、それはそれでCOGのテーマではあるまいか。

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最終選考の結果発表を待つ(画面最上段中央の京都市が1位となった)

PCとスマホで仲間とやりとりしながら

COG2019コンテスト最終審査は、当初予定では東京・本郷の東京大学構内で開かれることになっていた。そこに、新型コロナウイルスの市中感染拡大という事態が出来した。そのおかげで……というのは不謹慎かもしれないが、ZOOMというウェビナー(Webnar)ツールを初めて使う機会を得たわけだった。

そこで本稿は「初めてのウェビナー」体験談(実際は経産省DX室が前日に実施した「データとトキメキをつなぐBar」に次いで2回目)ということになるのだが、筆者の使い方は次のようだった。

(1)事前にCOGホームページからプレゼン資料をダウンロード→(2)PC(画面サイズ27インチのiMac)とスマホAndroid)にZOOMをインストールしスタンバイ(ZOOMをインストールすると参加する会議・イベントのコードが通知され、その通知を入力すると接続される)→(3)8日午後1時前にiMacスマホを起動し、COG中継室の様子を見ながら動作確認→(4)スマホ+イヤホンでZOOMの音声を聞きながら、iMacにプレゼン資料とZOOM画面を表示。

iMacに表示されたZOOMの画面(下の写真)を見ていただければいい。雑然とした机上の一部と、窓の外に隣家の屋根、庭の木が写っている。27インチ画面いっぱいに表示してもこれだけ鮮明なので、知り合いが「体型や顔色が誤魔化せないのは困る」とこぼしていたのがよく分かる。

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この状態で画面にもう一つウインドウを開き、フェースブック(fb)にあれこれ書き込んだ。また筆者が「管理人」を務めている「ソフトウェアと社会WG」に、COG2019中継の動画ウォッチパーティを表示した。

「COG2020オンラインミーティングに参加しています。私のような身体的事情で外出を控えている者にとって、こういうWebコミュニケーション手段は便利」の書き込みに、未来計画新聞のT記者から「わたしも見ています」があり、次いで鯖江市のS氏がコメントをくれたり……と、何だかんだ計30人が意見を交換したようだった。

リアルセミナー、ウェビナー双方に利点と弱点

今回のウェビナーは、主催者にとっても「実験的な試み」だったため、マイクの調子や画面の設定がギクシャクした。それも手作り感があっていい、と筆者は思うのだが、なかにはそのギクシャクを「欠点」と受け取る向きもあるだろう。ただし、これは熟れの問題。

ウェビナーの特徴は、登壇した講師とリアルに面座していないことだ。今般の感染症対策には効果的だが、全体の雰囲気が分からないのは弱点かもしれない。参加者の笑い声や呟き、どよめきなどは伝わってこない。プレゼンが終わったあと、退出していく講師をつかまえて、質問したり名刺交換をすることもできない。

もう一つの欠点は、休憩時間が受講者の離脱につながってしまうことだ。今回のCOG2019はスタートしたとき、参加者は約300人だったが、休憩後は約200人に減ってしまった。 

しかし長所はたくさんある。

セミナー会場まで移動しなくていい。講師も参加者も、遠隔地であっても移動に必要な費用(交通費、宿泊費)と時間の負担なく参加できる。

■周りに人がいないので、気兼ねなくブツブツいったり、キーボードを叩くことができる。

■おかげでfbで(slackでもいいが)、並行してチームのメンバーと情報を交換することができた。

今回はZOOMだったが、これから先、FreshVoice、AWV、V-CUVEなど様ざまなWebコミュニケーション・ツールに接する機会が増えるに違いない。リアルセミナーとウェビナーそれぞれに利点と弱点があるとしても、これなら平常時にウェビナーを選ぶことが増えるだろう、と思ったCOG2019オンラインイベントだった。