エンピリカル・ソフトウェア・エンジニアリング国際週間
スウェーデン南部の歴史ある大学都市LUND(スコーネ県)で1週間にわたって実証的ソフトウェア・エンジニアリングに関する国際会議が開催された(9月17日から22日)。「エンピリカル・ソフトウェア・エンジニアリング国際週間」(Empirical Software Engineering International Week)という。毎年各国持ち回りで少しずつ特徴のある構成で開催されてきたイベントだが、もとはそれぞれ第1回の会合が日本で開催された次の2つの会議を核としている。
1つはInternational Software Engineering Research Network (ISERN:アイサーン、国際ソフトウェア・エンジニアリング研究者ネットワーク) と呼ばれる20年の歴史をもつクローズな国際研究者会議、もう1つはInternational Symposium on Empirical SoftwareEngineering and Measurement (ESEM:イーセム、実証的ソフトウェア・エンジニアリングと計測国際シンポジウム)と呼ばれるその前身の会議(ISESE:イセセ-International Symposium on Empirical Software Engineering)から合わせて10年の歴史を持つ論文発表を中心としたオープンな会議である。今年はこの週にこれらと合わせて全部で7つの国際会議が開催された。
ここでこれらの会議の一部に参加する機会を得た筆者が、この領域で今、いったい世界の研究者あるいは彼らと連携する産業界がどこを向いてどんなことをしているのか、主観的にではあるが伝えたい。
開催地の背景
開催地スウェーデンのLUNDの最寄り空港は隣国デンマークのコペンハーゲン。ここから電車で国境の海峡をまたぐエーレンスド大橋をわたって30分程度で到着する。途中「ニルスのふしぎな旅」のニルスの生地であるスウェーデン第3位の街、マルメを通る。LUNDはLUND大学を中心に中世風北欧建築に包まれ、石畳に覆われた古い意匠そのままの大学都市である。
LUND大学は1666年創立の名門大学として知られ、ノーベル賞受賞者や首相を何人も輩出している。学生数47,000人、今回の会合はコンピュータ・サイエンス学部のソフトウェア・エンジニアリング研究グループがホストとなった。
この地域は2000年のエーレンスド大橋架橋を起爆剤にコペンハーゲン側とあわせて、マルメとともに発展著しく、そうした中で今回の会合誘致となった。
会合の全体像
この国際週間の6日間に次の7つの会議が開催された。
●20th International Software Engineering Research Network Annual Meeting(ISERN)
●6th International Symposium on Empirical Software Engineering
and Measurement(ESEM)
●3rd International Workshop on Security Measurements and Metrics(MetricSec)
●7th International Doctoral Symposium on Empirical Software Engineering(IDoESE)
●10th International Advanced School on Empirical Software Engineering(IASESE)
●7th International Conference on Predictive Models in Software Engineering(PROMISE)
●2nd International Workshop on Evidential Assessment of Software Technologies(EAST)
週間行事への参加登録が183人と発表されている。このほかにイベント毎に単独で参加した人がいた模様である。筆者はこのうち、ISERN、ESEM、PROMISEに参加した。ここでは主にISERNおよびESEMからその最前線を紹介したい。
筆者略歴
みたによしき: 1973年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、電電公社、NTT、NTTソフトウェア(株)を経て、2003-2011年奈良先端大研究員/非常勤講師、2004−2010年IPA/SEC研究員。2010年から現職。奈良先端大博士研究員、IPA/SEC専門委員を兼務。博士(工学)。