飛人・劉翔のレース棄権について

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 8月7日、ロンドンオリンピックスタジアム、110メートルハードル予選、劉翔氏が1台目のハードルに左足をぶつけ転倒。それを見て、国内ではお湯を沸かしたでかい鍋のように、毎日騒いでいて、心配の声があれば、非難の声もある。
 オリンピックが始まる前に、日本人の友達と今回中国の獲得した金メダル数について電話で話をしていた。友達は「やはり中国はすごい。今回もまた金メダルの数やメダルの数はアメリカを上回るでしょう」と褒めてくれた。その時、私は「国を挙げてやっているのですから、メダルの数がどれほど多くとも大したことない」と答えた。 
 電話をしながら、中国体育局や体育チームの幸せなことを頭に浮かべていた。国民の税金で養ってやっているから、よい成績に達することは当たり前だと思っていた。 
 しかし、その一方、選手たちのプレッシャーはほかの国の選手より多いと思われる。トレーニングが生活の全てである。運動場から食堂へ、寮までの三点一線、毎日、同じパタンで生活を繰り返している。普通の子供とは違って、勉強しないまま年を取り、引退したら就職が難しく、生活の保障がなくなるのだろう。オリンピックに参加し、チャンピオンになるしかないが、誰でもチャンピオンになれるとは限らない。 
 2004年アテネオリンピック男子110m障害走でチャンピオンになり、劉翔氏はその後もまた様々な世界的な大会で優勝して、国内では「飛人」と呼ばれて、中国13億の人々の注目に浴びている。しかも、誰でも厳しい目で彼のことを見ている。 
 今回の棄権はすごく残念な事には違いない。その悲しさや惜しさが言葉では表し切れない。だが、何でも彼一人のせいにするのはどうだろうと思う。
 
 誰でも失敗することがある。マイケル・ジョーダンであろうと、カール・ルイスであろうと、今話題になっているウサイン・ボルトでもあろうと、死ぬまでいつでも全盛期であることを保つわけではない。人間だけではなく、地球もいつか回りが止まる日がやって来る。太陽も必ず滅びる。宇宙でも生と死がある。 
 劉翔氏は今年29才になった。スポーツマンだったら、誰でも怪我等の問題を抱えている。アテネ五輪まで世界的な短距離種目では長年欧米選手に連覇されていた。2004年から8年間も経ったが、彼は今になってもアジア人で唯一のオリンピックの陸上短距離種目における金メダリストである。白色人種や黒色人種はやはり黄色人種より体の質がよいことは事実だから、劉翔氏はどれだけ頑張っていたのだろう、どんなに辛かっただろう。そこで、怪我の酷さも想像できると思われる。 
 同じ80年代生まれで、筆者は個人的には劉翔氏のことが好きだ。アテネで優勝した後、インタビュー際の彼の言葉をまだ覚えている。「中国人は同じくできる。アジア人は同じくできる」と叫んだ。中国人のためではなく、彼は黄色人種がほかの人種より劣っていないことを一生懸命証明してくれたんだと強い印象だった。その後、彼のインタビューは何回もあったが、いつも言葉が少なくて、決して偉そうな口ぶりで話したことは一回もなかった。
 非難する人があれば、心から応援している人も大勢いる。幸いにも、夕べ劉翔氏のアキレス腱の手術が成功した。近い内に上海に戻るそうだ。彼本人も手術後のブログで頑張って直してまた走り続ける事をアピールした。彼に元気が戻ってきたのでホッとしている。今まで通りに応援したいと思っている。