地域・市民目線の共創教育 清瀬第三小学校サタデースクールに行ってきた

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1月19日、筆者が自宅を出たときには明けの明星が輝いていた。話せば長い話になるので経緯は割愛するとして、目が不自由な高橋正視氏と江戸川橋駅有楽町線)で落ち合ったのは7時半ごろ。有楽町線西武線清瀬駅を降りると、清瀬第三小PTA会長・柿添信作氏が待っていた。(同小では「父母会」でなく、PTAが正式名称)

NPO「みんなで教材をつくろう」

高橋氏は元通産省官僚で、初期の情報処理技術者試験の運営を担当、その後、教育用ソフトウェアの企画・開発を専門とする企業を立ち上げるかたわら、「コンピュータ職人の会」を主宰するなど非営利市民活動にも注力していた。東京工科大学の講師を勤めながら、片貝孝夫氏(故人)と連携して群馬県東吾妻町の廃校を「合宿形式の教職員向けIT講座」の場にする運動を興している。

清瀬第三小のプログラミング講座もその一環で、2020年度にスタートする「小学校からのプログラミング教育」のあり方を実践することにねらいがある。2016年に最初の「サマースクール」(夏休みの1日、市民を講師に学童が専門的な知識や技能を学ぶ)に参加、現在は清瀬市に設立された「特定非営利活動法人NPO)みんなで教材をつくろう」の代表になっている。

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通常の土曜日は子どもだって忙しい

柿添氏の運転で清瀬第三小へ。挨拶もそこそこ、体育館で「はじめの会」が開かれるという。「?」だったが、要するにイベントを始めるときもキックオフのこと。サタデースクールで行われる科目ごとに、参加する児童(学童)が体育座りで列を作っていた。

向かって右から、バドミントン(体育館)、ゲートボール、サッカー、ドッジボール(校庭)、囲碁・将棋(会議室)、ギター(図書館)、絵画(ランチルーム)、世界の言葉(学習室)、和太鼓(音楽室)、プログラミング(パソコン室)の計10列。その周り(主に入り口近くだが)に保護者と講師(市内在住ないし在住者と縁がある”その道のプロ”)が立つ。

バドミントンの列が長いのはテレビなどで国際大会での日本人選手の活躍が報じられているためだろうか。だとするとサッカーはもっと大勢参加してもいいのに……などと思いながら写真撮影を続けていると、「サマースクールと比べると、少ないですね」と柿添氏が話しかけてきた。夏休みと違って通常の土曜日、家族と一緒に買い物や塾など子どもたちは何かと忙しいのだ。

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マイクロビットをscratchでプログラミング

プログラミング授業の会場となったのは2階奥のパソコン室だった。廊下には3年性の書き初め「友だち」が張り出されていた。こういう風景は昭和20年代生まれのオッさんにも馴染み深い(廊下の写真も撮影したのだが、生徒の名前が出てしまうので割愛)。

講師は石井ルモナ氏だ。EdTechZine(エドテックジン)によると「国内半導体メーカーを出産で退職、復帰後いくつかの職を経て、現在はフリーの講師、ライター。電子工作をかわいく作るのが趣味」とある。『かしこくカワイイmicro:bit入門ブロックプログラミングと電子工作』『みんなのRaspberry Pi入門』(いずれもリックテレコム)など多くの書籍を出版している。 

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今回は「micro:bit(マイクロビット)でメロディサイコロを作ろう!」がテーマ。micro:bitのプログラム・ページにアクセスし、scratchのプログラム・モジュールをダウンロードして組み合わせていく。ゴールはマイクロビットと電池が配線されたダンボールのカードを振ると、LEDで1から6までの数字が示され、メロディーが流れる「メロディサイコロ」を作ることだ。

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プログラミング教室の講師を務めた石井モルナさん

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プログラミングの授業に参加したのは1年生から6年生まで10人ーーと思いきや、付き添いだと思っていた父母も一緒に電子工作に参加したのだった。石井氏は内心、「2時間弱でどこまでいけるかな」と心配したそうだ。「振ったときに配線が外れたりして、うまく行かない子がいたら……というようなことも頭に過ぎった」という。しかし実際は案ずるより産むが易し、生徒たちは石井氏の説明を置いてきぼりにして、どんどん先に進む勢い。対して大人は説明書を見ながら手探りで進んでいく。

実際の作業がスタートして1時間ほど経った10時半ごろには、生徒たちは全員が完成。メロディサイコロを振って隣り同士で数字を競うゲームをしたり、電子音のメロディーを変えたりと余裕しゃくしゃくだった。「お父さんがラズパイ(ラズベリーパイ)でプログラミングを楽しんでいる」それを見よう見まねで、という子もいれば、「お兄ちゃんがやっているから」という子もいる。2020年度から小学校でもプログラミングが正規の授業になるのだが、こりゃ先生は大変だ。

手弁当のボランティアも「受け取るもの」がある

ところでサタデースクールの講師は全員が手弁当の無償ボランティアだ。筆者はかねてから「ボランティアだから無償が当たり前、という認識はおかしい」の論者だが、無償を承知でボランティア活動に参加することを否定しているわけではない。プログラミング講座で使用したパソコンとマイクロビットは学校が用意したが、和太鼓は「清瀬上和太鼓」(秦雅義代表)が2トントラックで学校まで運んできた。技術やノウハウだけでなく機材までボランティアで提供するのは、講師陣に「次の世代に残したい」「いましか体験できないことにトライしてほしい」という気持ちがあるからだろう。

囲碁・将棋の会場は写真を撮影しなかったが、「子どもたちがめきめき上達するのを見るのが楽しい」「定石を知らないので、アッと思うような手を打ってくる。想定外の応手に思わず考え込んでしまうし、教えられることがある」という。そうか、教える一方・与える一方じゃなく、教えられること・受け取ることもあるわけだ。

 

 ▼ギターの授業風景 フレームには入っていないが、左の外側にお母さんが参加。「和太鼓はホールで公演したんだから、今年の12月にはギターもホールを目指そうな」が合言葉という。

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▼ゲートボール 市内の高齢者チームが「子どもたちと一緒に」と申し出て実現したという。写真のフレーム外にも数人の生徒がゲームを楽しんでいた。授業ではあり得ないのは、指導員の女性が子どもたちに「おいしいからね」とスナック菓子を用意していたこと。そういう愉しみがあっていい。

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▼和太鼓 昨年12月、市民ホールで公演するところまでレベルアップしたという。指導役は「清瀬上和太鼓」(秦雅義代表)の面々。年が改まって全員が「初心者」なのか、バチを持つ手がまだ頼りない。リズムを刻んで叩く練習から、だった。

お子さんが参加している父親に話を聞くと「公演直前の1週間でメキメキ腕が上がった。自分の子がここまでできるようになったか、と嬉しくもあり、親離れするのはまだ早いと思ったり、複雑でした」という。

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▼バドミントン 

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▼絵画 テーマは「絵封筒で送ろう」。厚紙に封筒の展開図(糊代アリ)を書いて、そこに絵を描いていく。最後は厚紙を切って、折代をつけ、糊で貼って完成。

かつて美術の道を模索したことがある筆者にとって、参加者が少ないな、の感が強かった。それはそれとして、「大人が見て上手な絵、キレイな絵じゃなく、使いたい色で描きたい絵を自由に、がモットー」というのは賛成。

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