ドクダミの根を食べているか

 この前、日本のお知り合いの人たちと食事した時、「中国貴州省の人々はドクダミの根を食べているそうだが、あなたは知っているか」と尋ねられた。「ドクダミ」という日本語の名前だけでは分からなかった。

 携帯で一生懸命調べた所、「魚腥草」という別名が出てきた。中国でこの名前を聞いたことはあるが、筆者が生まれ育った江南地方(筆者は紹興市出身)はそれを食べる習慣がない。

 

 湖北省では魚腥草を冷菜として
 その夜、日本でお世話になったいる友人――湖北省四川省と隣接)出身――の家に戻り、この話をした。すると、「うちは魚腥草を冷菜として食べるよ」と教えてくれた。
 翌日、友達と散歩に出掛けたら、道ばたにドクダミがたくさん自生していた。たくさん自生していて簡単に取れるから、というのが理由なら、日本でも中国と同じように食用しているのではないだろうか、と思った。

 それで早速調べてみた
 分からないと気に食わない性格なので、早速調べてみた。
 信じられなかったが、筆者の故郷の紹興と深く関わりがあったと思われる。
 『会稽志』と『会稽賦』によると、越王勾践は呉に対し復讐し、国力を上げたい一心で、穀物の収穫が少ない時、国民を餓死から救うために、自らドクダミの根を掘出して食べていた、という。「魚腥草」と名を付けたのは勾践本人だという説もある。その名前の意味だが、魚の生臭みがする草という。
 今でも中国西南部では、「折耳根」(ジョーアルゲン)と称し、四川省雲南省では主に葉っぱや茎を、貴州省では主に根を野菜として用いている。根は少し水で晒し、唐辛子等で辛い味付けの和え物にする。加熱することで臭みが和らぐことから、日本では山菜として天婦羅等で賞味されることがある。また、ベトナム料理ではザウジャプカーと呼ばれ、とりわけ魚料理には欠かせない香草として生食されている。

 「ドクダミ」という名前
 元々は「毒矯み」(毒を抑える)から来ているそうである。
 生薬として、開花期の地上部を乾燥させた物は十薬(或は重薬)とされ、日本薬局方にも収録されている。抗菌、利尿、動脈硬化の予防作用等がある。 また、湿疹、かぶれ等には、生葉をすり潰した物を貼り付けるとよい。漢方薬でも解毒剤として用いられ、魚腥草桔梗湯、五物解毒散等に処方される。
 その一方、中国では「薬食同源」という思想を重んじている。病気になってから薬を飲むではなくて、食生活から病気の予防をするという考え方である。
 中国を例にすると、「南甘く北塩辛し、東辛く西酸っぱし」と言われている。住んでいる地域の物産や天候等により、その地方の食文化が生まれる。特に、人々を病気から守るために、独特の食べ物や味が生まれている。
 四川省は山椒と唐辛子を使う辛くて痺れる料理を食べる。湿度が高く、しかも比較的暑いので、その高い湿気から体を守るために、四川料理が生まれた。貴州省は四川と同じような気候で、湿気から守られるためには「ドクダミの根」を食べるのも一つの選択であったのに違いない。