3月期決算/マンパワー型受託サービス112社 「低位安定」からの脱却なるか(3)

就業者の処遇はこの10年でやや劣化 人/月単価と多重下請けという基本的な構造を頭に入れて参照しなければならないのは、就業者の平均年収である。業績の伸び以上に、就業者の処遇が改善されていれば、産業としての魅力度が増したことになる。 ●2012年…

3月期決算/マンパワー型受託サービス112社 「低位安定」からの脱却なるか(2)

1人当たり業績=実質はどうだろうか 企業ベースの集計結果を見ると、受託ITサービス業は好調そのものといっていい。コロナ禍で減収減益に苦しんでいる他業種から羨望の目が向けられ、就職・就業希望者が増えるのは無理もない。 同じ数字を就業者の目線で…

3月期決算/マンパワー型受託サービス112社 「低位安定」からの脱却なるか(1)

株式を公開している3月期決算ITサービス関連企業の通期業績発表が、5月20日に出そろった。新型コロナ感染症対策に伴う経済活動の縮小にもかかわらず、法人向け、個人向けとも増収増益だった。なかでもマンパワー依存型ITサービス業112社の業績は…

業務のデジタル化を阻むIT清書機の謎─『鎌倉殿の13人』と「働かないおじさん」の深い関係(3)

集団指導体制と共同無責任組織の産物 さて、毎週日曜夜に放送しているNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(画面1)の話である。源頼朝は坂東の武者から絶大な支持を得た。なぜ諸将が推戴したかと言えば、清和源氏の宗家嫡流というカリスマを備えた「スゴイ人」だ…

業務のデジタル化を阻むIT清書機の謎─『鎌倉殿の13人』と「働かないおじさん」の深い関係(2)

IT目線ではEUCに落ち着くのだが…… 「では、この続きを議論しましょう」と始まったデジタル座談会の意見交換では、参加者から今回の新型コロナ感染者情報の収集にかかる「HER-SYS」、医療機関や保健所などとのやり取りにファクスが使われていること、あ…

業務のデジタル化を阻むIT清書機の謎─『鎌倉殿の13人』と「働かないおじさん」の深い関係

今回のテーマは企業情報システムのメインストリームからやや外れるが、ビジネスシステムイニシアティブ協会(BSIA)主催のデジタル座談会(2022年2月21日開催)を契機に、「IT清書機」の問題を考えてみた。業務システムにおける紙媒体の扱いと受け取られるの…

デジタルに浮き立つ前に、既存プロセス/システムの見直し・整理を 技術的負債はレガシーだけじゃない─DX着手前にやっておくべきこと(3)

バズワードの空中戦より大事な地上戦 ここで思い出すのは、みずほ銀行のシステムトラブルだ。第一勧業、富士、日本興業の旧都市銀3行のシステム統合という特殊な要因があるにせよ、デジタル通帳やWeb口座といったDXレイヤの展開を、既存の基幹系プラットフォ…

デジタルに浮き立つ前に、既存プロセス/システムの見直し・整理を 技術的負債はレガシーだけじゃない─DX着手前にやっておくべきこと(2)

「バラ色の将来像」の実現は困難、問われる視座は テレワークを取り込んだ多様な働き方、取引データを適時把握・分析するリアルタイム経営、ビッグデータに基づく迅速で柔軟な資金融資と経営アドバイス等々。DXが実現するバラ色の将来のためのアーキテクチャ…

デジタルに浮き立つ前に、既存プロセス/システムの見直し・整理を 技術的負債はレガシーだけじゃない─DX着手前にやっておくべきこと

経済産業省が「崖に落ちるぞ」と警告した2025年まであと3年。経営陣は「我が社のDXはどうなっているのか」と回答を求めてくる。あるいは「早くDXを導入しろ」と催促する。一方、IT部門は「予算も人手もないのに」と不満を募らせる。2025年の崖が本当にあるな…

2021年、メディア掲載の記事

2021年に商業メディアに寄稿した記事をまとめました。 週刊誌や月刊誌は編集者の交代、Web系メディアはコロナ禍の編集方針転換等により、最終的に『IT Leaders』だけになっています。平均すると一月半に1本のペースとなります。 6月から3か月半ほど間が空…

2022壬寅年 明けましておめでとうございます

2021年、IT記者会Webサイトへのアクセス総数は約8万5千件でした。 若手に譲るつもりで記事を控えていたため、過去記事が中心となりました。それでも多くの方にお読みいただき感謝いたします。 本年も飽きず見捨てず呆れずの「3ず」でお付き合いください…

改善止まりで崖に落ちる前に──DXの要諦はサイバー/フィジカルのCPS指向で臨むこと

2018年9月に経済産業省が公表して“2025年の崖”の警鐘を鳴らしたDXレポートから3年。デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉はテレビCMでも喧伝されるまでに浸透した。だが実際の取り組みはというと、本格的なデータ活用も業務のデジタル化も一向…

AWS/GCP採用に続く次の一手は? デジタル庁のガバメントクラウド先行事業(3)

データの”確からしさ”をどう担保するか 水面下で総務省やデジタル庁と連携しているのは、内閣官房のデジタル市場競争本部も同様だ。同本部主宰のTrusted Web推進協議会(座長:村井純慶応義塾大学教授)の第4回会合が、牧島デジタル担当相によるガバメントク…

AWS/GCP採用に続く次の一手は? デジタル庁のガバメントクラウド先行事業(2)

”信頼に足るクラウド”の要件 ガバメントクラウド先行事業でAWSとGCPの両クラウドが適用されるのは、以下の2項目だ。 ●地方公共団体の主要17業務における標準化などを検討する先行事業を実施するためのクラウドサービスおよび関連サービス●各府省庁のWebサイ…

AWS/GCP採用に続く次の一手は? デジタル庁のガバメントクラウド先行事業(1)

行政DXの基盤となる「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)先行事業」にAWSとGCPを採用──デジタル庁の公式発表が2021年10月26日で、先日の総選挙の争点にはならなかったが、見落としてはならない重要なニュースだと言える。国民の生命・財産にかかるデータを扱う…

“デジタルの渦”に飲まれるか、巻き返すか─必要なのは「デジタル日本」への改造論

安易なバラマキ公約なんて要らない─新政権発足と衆院解散・総選挙で思うこと 画面1:自民党総裁選に勝利した岸田文雄氏が第100代内閣総理大臣に就任した。2021年9月29日付けBBCの記事より。 2021年10月4日に岸田文雄自民党総裁が第100代内閣総理大臣に就任、…

本音は「人月型SIビジネスに見切り」だけじゃない─“意外に奥が深い15ページ”が示すもの

デジタル産業への具体的道筋は?「DXレポート2.1」の真意を読み解く デジタル産業の構造(出典:経済産業省「DXレポート2.1」) 経済産業省が2021年8月31日付で「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」を公表した。これまでのユーザーと受託型ITベンダーの関…

「DXレポート2」に書かれなかったこと─経産省の真意を深読みする 情報産業からデジタル産業に軸足を転換、その過程で浮き彫りになる3つの課題(3)

「デジタル産業」の形成で多重下請け構造から脱却 より難題なのは、(2)IT産業の多重下請け構造だろう。所管する商務情報政策局の情報産業課(ソフトウェア・情報サービス戦略室)は2021年2月4日に「デジタル産業の創出に向けた研究会」を立ち上げ、かねてか…

「DXレポート2」に書かれなかったこと─経産省の真意を深読みする 情報産業からデジタル産業に軸足を転換、その過程で浮き彫りになる3つの課題(2)

「DXレポート2」に書けなかった3つの問題 DXレポート2は仕事納めの年末ギリギリに公表しなければならないほど切羽詰まった内容ではない。もう1つのディスカッションペーパーも年初に公表するより、じっくり読み込む時間を考慮すべきだったかもしれない。 そ…

「DXレポート2」に書かれなかったこと─経産省の真意を深読みする 情報産業からデジタル産業に軸足を転換、その過程で浮き彫りになる3つの課題(1)

2月16日に掲載されてから4月6日までアクセスランキングTop10に入っていましたが、ようやく圏外に消えたので、ここに再掲します。 ************************************ 経済産業省が2020年末に公表した「DX…

日本政府が世界に発信するDFFT のコンセプト「Trusted Web」の具体策を聞く(3)

Trust Webアーキテクチャーの構成要素 Trustを実現するには、データのやり取りをする相手を確認する必要があり、デジタル上で個人・法人等の属性が検証されることが必要となるが、属性を紐づけるための識別子を発行し、管理する機能として①のIdentifier管理…

日本政府が世界に発信するDFFT のコンセプト「Trusted Web」の具体策を聞く(2)

Trusted Web が目指すべき方向性 以上を踏まえ、Trusted Webは、「デジタル社会」における様々な社会活動に対応できるTrustの仕組みを作り、多様な主体による新しい価値の創出を実現することを目指していくこととする。 Trusted Webが実現を目指すTrustの仕…

日本政府が世界に発信するDFFT のコンセプト「Trusted Web」の具体策を聞く(1)

内閣官房デジタル市場競争本部 記者レクの要約 ――IT記者会向けにオンライン・ブリーフィングを開きたいと言っている。誰とコンタクトを取ればいいのか、教えてほしい。 というメールが届いたのは3月30日だった。 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の中に…

コロナ禍で注目のWeb不動産賃貸仲介システム テック企業に見る「DX」の作り方(下)

付随する業務をリバンドリングする 法制度の観点で不動産賃貸契約における押印の省略、重要事項説明の電子化、さらに契約そのもの電子化に目処がついた。仲介業・借り手双方の課題も見えたとなれば、一気にシステム化し競争優位を確立しよう、と提案したくな…

コロナ禍で注目のWeb不動産賃貸仲介システム テック企業に見る「DX」の作り方(上)

As-Is分析をデジタル改革につなげるには 新型コロナ禍が喧伝される中、不動産賃貸業でも非接触型サービスの需要が高まっている――これは日本不動産ジャーナリスト会議(REJA、代表幹事:阿部和義氏)のZOOM研修会「賃貸不動産DXの最新動向」(講師:イタンジ…

佃均 2020年の全仕事

1月〜5月は順調に寄稿実績を重ねたのですが、5月末から9月まで、新型コロナウイルスの難を避けるため、自主的に「休憩」していたことになりました。 2020.01.23 【IT Leaders】 経産省が「2025年の崖」対策の第2弾を発表─「DX銘柄」と「デジタルガバナン…

As-Is/To-Beはもはや限界、“DXの見取り図”からデジタル基盤を築けるか(3)

DXという未知の領域に踏み出すには 2015年、IoT(Internet of Things)が話題になり、政府の未来社会コンセプトとしてSociety 5.0が提唱された。これを機にIPAは「つながる世界」のシステム開発指針やシステム品質管理、安心・安全の確保にシフトした。しか…

As-Is/To-Beはもはや限界、“DXの見取り図”からデジタル基盤を築けるか(2)

DADCの全体像(図1)が固まり、センター長、プロジェクトリーダー、アドバイザーが決まり、検討テーマが選定された(図2)。経産省でも専門家会議がスタートした。そのうえでの10月22日のオンラインコンファレンスは、DADCの始動を告げるイベントだったこと…

As-Is/To-Beはもはや限界、“DXの見取り図”からデジタル基盤を築けるか(1)

IPA「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター」設立の背景と目的 2020年5月、独立法人情報処理推進機構(IPA)に「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター」(DADC)が新設された。闇雲にデジタルトランスフォーメーション(DX)を模索するのでなく、…

デジタルガバメント集中投資の行方 ポスト安倍/アフターコロナのIT施策はどう動くか(3)

巻き返しの基盤は整った、後は実行あるのみ 世界銀行が2018年10月にまとめた「事業環境ランキング」で、日本は世界190カ国中39位。国連経済社会局(UNDESA)の「電子政府発展度指標(EGDI)」では、日本は2018年の10位から14位に後退──。その要因はITそのも…